NPO法人日本健康住宅協会 事業委員長/HM育成部会長 和田 伸之
(Jobライフ研究所 所長)
〜住宅変遷と共に変わる暮らし方〜
日本の3大随筆のひとつ「徒然草」(吉田兼好1330年)に“家の作りやうは、夏をむねとすべし”とある様に日本住宅の原点は如何に高温多湿な夏を過ごせるかにあった。確かに日本古来の住宅では板戸(いたど)、障子(しょうじ)、襖(ふすま)を外し、風通しの良い大空間を作り、簾(すだれ)や蚊帳(かや)で安眠を求め、団扇(うちわ)と風鈴(ふうりん)の音で涼を感じたものである。
これらに比して現代住宅でもある高性能住宅では、気密性や断熱性を高め、熱を通さず逃がさない構造に変えてきた。ではこの急激な変遷に対して私達の暮らし方はどうであろうか?知識や経験の不足から知らない間に古来の住まい方の常識が非常識となり、健康を損ねるという過ちを犯しているのではなかろうか?当協会ではこの健康を損ねる過ちを健康阻害要因と呼び改善が必要としている。
〜高性能化にもバランスが必要〜
一般的な考え方に病気はDNAつまり親より受け継いだ遺伝子と生まれ育った環境が関係すると云われている。この環境には大きく食環境と住環境の二つがあると考えている。定期検診や特定健診では医師や保健師から食事制限や運動不足改善を示唆される。しかしながらこれは食環境の改善であり住環境の改善まで触れる事は稀であると云える。保健師や栄養士の先生から「バランスの良い食事を採りなさい」とご指導戴く様に、新築やリノベーション時にも住環境バランスが必要であり、それらに特化した暮らし方も重要である。そのバランスとは空気環境、温熱環境、音振動環境、光視環境である4つの住環境と3つの防除対策でもある防露・防カビ・防虫と考えている。
これらは住空間を快適に保つ条件であり、安心感を醸し出す要因とも云える。
〜住まいの現代病〜
一見この言葉から受ける印象は住宅の寿命や材料の劣化の様に思えるがそうではない。この病気は住環境が人へ対して与える悪影響を謳っている。しかも悪影響の大半は急性でなく慢性もしくは亜急性であり、変異原性や催奇形性などを伴い、発がん性などのリスクも負ってしまう。それが先ほども述べた如く間違った認識なくして陥るというのでは溜たまったものではない。この病気はお医者様がカルテに記載する病名リストに載っているものもあればそうでないものもある。兎に角やっかいな存在であり、難しい問題でもある。しかしどんな病気でも将来に陥る可能性が少しでもあるならばそれらを回避するのが先決であり、予防する術を身に付ける事が重要なのである。NPO法人日本健康住宅協会ではこれらを住まい手の方々が学習しやすいように4つの環境と3つの防除毎に研究部会を立ち上げ部会員を募り研究活動を始めている。
7つの病名リスト
7つの 配慮項目 |
空 気 環 境 |
温 熱 環 境 |
音振動 環 境 |
光 視 環 境 |
防 露 |
防カビ |
防 虫 |
住まいの 現代病 |
シック ハウス |
サーマル ショック |
サウンドシ ンドローム |
睡眠リズム
障がい |
結 露 被 害 |
カビ・ダニ アレルゲン |
シロアリ・ 害虫被害 |
|