〜住まいは構造物と住空間で構成される〜
健康に暮らせる住まいとは果たしてどのような住まいなのか?
この問題を考える前に住まいとは何かを考えて見よう。住宅は構造体と構造体で囲う住空間で構成されている。人はこの住空間で生活する上で、様々な室内環境の影響を受ける。この室内環境の良し悪しが健康に暮らせるか否かを決定すると言っても過言では無い。例えば病気の原因は遺伝と生活習慣が関係すると言われているが、この生活習慣とは食生活だけでなく住環境も大きな影響を与えているのである。
〜高気密・高断熱住宅は伝家の宝刀か〜
ところで住宅は国の施策により年々高性能化している事は確かである。昨今の高気密・高断熱住宅の室内環境は昔の建物に比べて、かなり改善されている事は確実である。
もしそうであれば、高気密・高断熱住宅に住めば健康に暮らせるのであろうか?
答えはノーである。その理由はそこに住まう住まい手が、高気密・高断熱住宅に即した正しい住まい方をしないと、高気密・高断熱住宅に住んだために逆に病気になる事が現実に生じるのである。一例を上げると、高気密・高断熱住宅は従来の低気密住宅に比べて自然の換気量が極端に少ないため、室内の空気が化学物質や臭いで汚染されると換気扇を正しく運転しないとたちまち汚染された空気が住まい手の健康を蝕む事になる。
NPO法人日本健康住宅協会では、住宅の正しい住まい方を住育活動として普及に努めている。
〜健康に暮らせる住まいの要素とは〜
それでは、健康に暮らせるための住まいの要素を具体的に挙げて見よう。
NPO法人日本健康住宅協会では"健康に暮らす住まい"すなわち健康住宅とは下図に示すように、結露、空気、カビ、白蟻・害虫、温湿度、光、音等の環境が適正な状態に保たれて住まい手が安心して生活出来る住宅と定義付けている。
〜健康被害と健康阻害〜
ところで、一般的には健康に暮らせない住まいの原因は建物そのものにあると考えがちだが、果たしてそうだろうか?確かに住まいそのものに原因がある場合も無いわけでは無いが、意外に住まい手自身に原因がある場合も少なく無い。
NPO法人日本健康住宅協会は住まいそのものに原因がある健康障がいを健康被害、住まい方や住まい手に原因がある健康障がいを住まい手自らが健康を阻んでいる事から健康阻害と定義している。
前述の健康障がいのコンテンツと対策を健康住宅の要素別に健康被害要因と健康阻害要因として下表に整理した。
健康被害要因の要点は、「断熱」「給排気」「冷暖房」「照明」「周辺環境」「遮音」になる。また健康阻害要因の要点は、「水蒸気発生」「通風・換気」「家具・日用品類の空気汚染」「清掃及び整理・整頓」「温湿度制御」「日照調整」「騒音」である。
健康に暮らせる住まいを確実に得るためには、土地の購入時や建物の計画時には健康被害要因のチェックを行い、入居後は健康阻害要因を配慮した生活をする事が肝要である。
〜健やか住まい方の提唱〜
最終的に健康に暮らせる住まいのポイントは、「生活水蒸気の抑制と換気・通風の心がけ」「整理・整頓と清掃」「温湿度の適正なコントロール」「家具や日用品による空気汚染配慮」の4点であるが、これらが住生活していく内に正常に保て無くなったり、不具合が生じる事により、健康に対し何かしらの影響を与え、アレルギーや疾患の根本ともなり得ることはこれまで述べてきた通りである。また、それらの影響は大人によりは小さな子供や高齢者もしくは疾病を患った人に対し大きな影響を与える。生活空間を管理もしくは維持する事は現代社会であれば一見マイコンやセンサーで容易に出来そうな気がするが、現実は一人ひとりの体調の変化に合わせて微妙なさじかげんが必要である。さりとて人の直感力だけに頼るのは危険であることは云うまでもない。現代住宅に相応しい住まい方を知識として習得し、一瞬の外気や室内の変化に併せて室内空間を健全な状態に保つノウハウを身につける事こそ健康な暮らし方の源と云える。
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