2005年度特別講演 |
2006年5月25日に開催されました第14回研究発表会で、KJK理事の高幣喜文氏(タカヘイ建築技術研究所)に「建築紛争の現状と課題」のテーマで特別講演をお願いしました。 |
高幣喜文氏講演要旨 |
阪神大震災以後、欠陥住宅紛争が多くなり、年間25,000件が裁判所に持ち込まれ、訴訟事件の中では医療訴訟に次いで多くなっています。
建築紛争の特徴は専門性が高く因果関係の特定が困難なため感情的になりやすく、また、紛争の背景としては建築基準法の改正や性能規定化、品確法の制定などの法的環境の変化と法規無視や知識・技能不足、契約不備などによる欠陥住宅の多発があります。建築主〔売主〕が倒産し不法行為があれば設計者、管理者、施工者に損害賠償が求められることになり、このケースが増えています。そのため、設計事務所の賠償責任保険への加入が増加しています。
最高裁判所の最近の判例では建替費用については重大な瑕疵により建替えしか方法がない場合は、建替え相当額を認める判決が出ました。契約違反問題については、耐震性を高めるために基準以上のスペックを要求して契約し、基準通りで建てた物件について高裁では構造計算上は安全として瑕疵とは認めなかったが最高裁では契約に違反があり瑕疵として高裁に差し戻されました。名義貸し問題では契約をしていなくても申請上の管理者は法的責任を負うとして、申請図面と異なる図面で工事して構造耐力が不足し瑕疵となった物件については建築士は設計図書通りの工事が施工されるように工事監理の法的義務ありとされました。
建設業界の現状は、(1) 公共市場の縮小と住宅市場への偏り、コスト競争や工期短縮による品質問題、大地震や災害多発の問題、(2) 耐震偽装、東横インの法規違反、談合問題に見られるコンプライアンス欠如、(3)アスベスト・ダイオキシン・産廃、シックハウス対策などの環境問題の3つの問題を抱えています。
住宅の紛争事例としては床、外壁、内壁での雨漏り、ひび割れ、漏水などの住宅の不具合事例と、基礎と地盤に関する不具合事例があります。特に公演者の専門分野である基礎については、基礎の鉄筋のかぶり不足、異種基礎、杭基礎、柱状改良、掘削による隣家の損傷事例などがあります。
東京では請負代金や瑕疵の損害賠償など契約違反が多く、大阪では法規違反が多い特徴があります。
紛争では調停成立が66%、途中和解が17%、判決まで行くのが10%程度です。
今後の課題としては経験と知識の不足を補い、コスト縮減・工期短縮の圧力に応えるための教育と技術の普及が必要であり、コンプライアンス重視、住生活基本法案〔耐震化、省エネ化、バリアフリー化〕、品確法の改正、確認審査・検査の拡充、保険制度などの法と仕組みの整備が必要です。
KJKには健康住宅先駆者としての誇りをもって、住生活の安全・安心を目指して活動の拡充と内容の充実を図って欲しいとの期待が述べられました。
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