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KJK INFO
----2004年9月----
 ●「ヒートアイランド現象と健康」
 
今年の夏はかつてない暑さに見舞われた。多くの都市で真夏日の連続日数などの記録を更新した。7月20日、東京で最高気温が39.5℃になり最低気温が30℃をうわまわったイベントレポートは記憶に新しい。大阪でも7月の熱帯夜(最低気温が25℃以上)が25日にもなった。これだけ暑くなると健康障害も発生する。7、8月に熱中症で搬送された人が東京だけで900人近くもあり、重症患者の半数以上が室内で発症したという。
このような事態を招いた異常気象は、太平洋高気圧の勢力だけでは説明できない。都市における熱の蓄積が引き起こした「ヒートアイランド現象」によるところが大きい。その原因は、太陽熱を蓄えやすいコンクリート建造物、水の蒸散を妨げる舗装道路、自動車のエンジンや建物の冷房による排熱などにある。室内を快適にしようとエアコンを強めれば、エネルギー消費の分だけ熱が増えるから悪循環を招き、本質的な解決は得られない。
いかに人工的な都市であっても、熱を排除するメカニズムはある。その一つは屋根を明るい色にして太陽からの輻射熱を宇宙にはね返すこと。二つ目は水面、舗装のない地面、公園や街路の樹木・植栽などで水の蒸散を助けることである。もうひとつ、海に面した都市なら、比較的低温で重い海上の大気が、都市の熱く軽い空気の下に流れ込み熱を拡散させる。ところが、最近完成した品川と汐留の大規模開発は、その効果を奪った。壁のように並んだ超高層ビル群は、この海風の流れをブロックし、都心部の風の動きを弱めてしまったようなのである。
このような状況に住宅での対策はあまりに小さく見える。しかし、大きな現象も小さな要素の累積である。同時に、一人の健康・一戸の快適性は、都市や地域の健康(良い状態)に依存する。ヒートアイランド現象を緩和し近所迷惑を避けるには、エアコンへの全面依存をやめ、できるだけ機械に頼らない方法で涼しさを得ることを考えたい。できる限り緑を増やし、建物への日射を遮り、打ち水をするなど暮らしの工夫を最大限にすれば、もう少しエアコン利用を抑えられるはずである。そのエアコンも、省エネ性の高いエアコンを選ぶこと。性能はCOP(成績係数=消費エネルギーに対する冷凍量)で表され、それが6という優れた製品もある。
私事になるが、我が家では今年もエアコンなしで夏を過ごした。夜間の気温が25℃以下になる郊外向きの手法で、外断熱したコンクリート躯体を夜の風で冷やし、昼間は窓を閉め熱風をさえぎる。窓からの日射は外付けブラインドで遮り、庭の照り返しはカーテンで防ぐ。このシンプルな方法で最高気温が35℃に達した日でも、1階の最高室温は28〜29℃に納まった。風が欲しければ扇風機、これで十分涼しさが得られる。
住宅におけるヒートアイランド対策の基本は省エネへの努力にある。そもそも季節を感じさせないような機械的な室温維持が健康に良いものかどうか疑ってみよう。異常な暑さは御免蒙りたいが、夏はほどほどに汗をかくことで自然な健康体が得られると、私は信じている。

(参考資料)
ヒートアイランド対策大綱、2004.3.30環境省
省エネルギー性能カタログ、04夏(財)省エネルギーセンター

大阪ガス(株)エネルギー・文化研究所
濱 惠介

施設見聞録 コラム