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部会紹介(専門委員あいさつ)

 ガラスやサッシのように非透湿な材料でつくられ、十分な排水機構が整っていれば、結露水による実害はほとんど発生しないと専門家は判断します。しかし、一般的に居住者はガラスやサッシで出来た「窓」の結露を見栄えの悪さから強く嫌悪し被害意識を強く持ちます。逆に壁や床、天井などでは表面結露が発生していても、見栄えや使い勝手の悪さが無ければ実害の意識は低く、長い時間が経過した後の壁紙のはがれやカビ、しみの発生にいたって問題視します。ましてや建材内部結露にいたっては、数年、数十年を経過して、床が傾いた、抜けたなど実害が発生して初めて問題として認識されています。

 さて、全国の住宅ストックに大きな比率を占める築年数が経過した住宅では現在の基準からは到底許容されない断熱仕様のまま生活が営まれています。さらに、結露被害防止のための有効な手段である室内での発生水蒸気の非拡散・瞬時排出(換気の促進)を図る暮らし方はほとんど行われていません。暮らし方に防露思想の反映はほとんど見られないのが実態です。

 新築はもとより、改修による現基準による高断熱・高気密化による住宅の断熱性能向上は、一般的居住者をも満足させる結露被害防止の有効な方法であるはずでした。しかし、断熱、気密性能が十分発揮される丁寧な施工が要求される上、室内の温度分布を作らず、高湿度化を防止する排湿が常時行われる生活が出来て初めて、高断熱・高気密化が結露被害防止につながるのです。

 結露被害防止は古くて新しい問題です。器としての建物の性能が上がっても、そこでの暮らしが器の性能にあったものである必要があります。器の性能が低いのならなおさらです。器としての住宅の性能のみならず、暮らし方にまでも踏み込んだ意識の改革が必要となっております。

  本研究会での研究成果が今後も結露被害防止にかかわる住宅の性能向上に生かされるよう、更には暮らし方の中に防露意識を定着させるために努力してゆきたいと考えています。

防露部会 専門委員 佐藤真奈美