空気環境部会
においのQ&A

においの感じ方や人体への影響

“におい”の感じ方には何が影響しますか?

においの感じ方
においの感じ方は、マスキング、変調、加齢、個人差、体調、男女差、日内変動、順応、におい成分の濃度などにより違ってきます。

においの感じ方
に関する因子
においの感じ方
マスキング
(masking)
快適なにおいを悪臭より強く流すと快適なにおいは感じるが悪臭の感じ方が弱くなる。これをマスキングあるいは隠蔽と言う。これは悪臭物質がなくなったわけではなく感覚的にそう感じるものである。感覚的にそう感じることから感覚的消臭とも言われる。
二つのにおい物質を混ぜ合わせたとき、そのにおい強度は、二つの物質のにおいの強さの和より小さくなる、またそのにおいの強さは平均より大きくなり、各々のにおいの感じる強度は単独の時の各々のにおいより弱くなる。 (マスキングは弱い臭気に対して非常に効果的。)トイレや室内用の芳香剤、香水、コロン等がこの原理を利用したものである。
変調
(modification)
複数のにおいを混合するとにおい強度は変化するが、質的変化も起こり得る。このにおい同士の混合により、全く別のにおいに感じたり、においのニュアンスが変わったりすることを変調という。日常感じる悪臭も大部分は混合臭で、変調されたにおいである。また変調を利用したものが各種の調合香料であり、香水はその代表例。
加齢 加齢により嗅覚能力は低下し、特に認知能力の減退が大きい。検知能力は高齢(70〜80歳)になってもあまり低下しないが、何のにおいかを判断する能力(認知能力)は加齢とともに急速に低下する。この認知能力の低下割合は女性より男性の方が大きい。
個人差 においに対する人の閾値(においを感じる最低濃度)はすべての人に共通に当てはまるものではなく、たいていは多くの人について調べたものの平均値である場合が多い。においに対する意識の違いによって敏感に感じる場合がある。
体調による
個人内変動
人は風邪をひいたりして鼻づまりの状態になるとにおいはよくわからなくなるし、過労や睡眠不足の時なども当然影響を受けるが、これは嗅覚機構への影響だけでなく集中できないことも影響している。女性の場合は月経サイクルや妊娠により嗅力が影響を受ける。
男女差 性別差はそれほど大きくはないが、統計的に女性の方が男性より嗅力は上とされている。嗅力は加齢とともに男女とも低下するが、低下の割合は男性の方が大きい。ただし、においの種類によっては女性の方が男性より劣るのが早いものもある。
個人の日内変動 体調にかかわらず朝と夜とではにおいの感じが微妙に異なる場合がある。昼の活動期は早朝や夜に比べ、においを多元的に(いろいろな選択肢で)評価する傾向があるという結果が報告されている。嗅力については多少日内変動はあるものの有意な差は今のところ認められていない。
順応 あるにおいを持続的に長く嗅いでいるとそのにおいの感じ方が弱くなることを順応という。順応により閾値の上昇や感覚強度の低下がみられる。よく似た表現で「慣れ」(同じにおいを何度も嗅いでいるうちにそのにおいを気にしなくなること)や「嗅覚の疲労」(順応が一回の持続的なにおい刺激とすれば嗅覚の疲労は断続的なにおい刺激により吸感覚が低下することを指す)がある。
におい成分の濃度 香水などのようににおい成分の濃度が低いときには快適に感じるものでもその濃度が高くなると逆に不快に感じる場合がある。
(川崎通昭、堀内哲嗣郎 著:「嗅覚とにおい物質」、社団法人臭気対策研究協会、に一部加筆)