住まいの工夫

高齢者対応住宅の注意点(詳細編)

 長寿社会対応住宅設計を施工するのに配慮すべき重要な3点を掲げました。

階段の配慮項目
 身体的運動能力の低下により、階段の昇降は負担となります。また転落事故の多い危険箇所のため、手すりの設置や勾配の低減、照明の工夫などによる安全確保が必要です。
a. 踏み面240mm以上、けあげ180mm以下の緩やかな勾配とする。
 踏み面(T)とけあげ(R)の関係を、
  550mm≦T+2R≦650mm かつ 勾配≦6/7 とする。
 廻り階段は踊り場を設け、直接下まで転落することを予防する。
 踏み板はすべりにくいスリップレス仕上げとする。
 段鼻を視認しやすくするために色を変えるとよい。
b. 手すりの設置は必須で、なるべく切れ目をつくらずに連続とする。
 手すりの設置高さは踏み面から750〜800mmを目安にする。
 階段の有効幅は手すりの端面から750mm以上を確保する。
c. 足元の暗さを補うとともに、階段全体の視認性を上げるため、光源が直接目に入らないように照明を設置する。
 赤外線センサー付き足元灯などを利用すると、スイッチ操作をしないでよいので安全性が高まる。
d. ホームエレベーターは、安全で有効な住宅設備のひとつである。

浴室の配慮項目
 浴室内では、濡れによる滑りや転倒への対応だけでなく、介護が必要な際の対応にも配慮する必要があります。したがって十分なスペースの確保や、浴槽内での安全の確保、滑り防止、段差の解消などに留意することが重要です。
a. 原則として高齢者の寝室と同一階とし、
  介助を想定して1,820×1,820mm程度とする。
  床材は濡れても滑りにくい仕上げを採用する。
b. 出入り口は車椅子などの移動を想定し、段差を極力少なくする。
  開口幅は650mm以上確保し、開閉しやすい引き戸を用いる。
c. 浴槽はまたぎやすくするため350〜450mmの高さにし、腰掛入浴が可能なように縁を広くする。
  安定した姿勢が保てるように、浴槽長さを内法で1100mm程度とすることが望ましい。
  浴槽底面は立ち座り時の転倒防止のため、滑りにくい形状にする。
d. 手すりを用途に応じて設置する。
  ・ 浴槽をまたぐための縦手すり
  ・ 浴槽内での姿勢保持のためのL字型手すり
  ・ 洗い場での立ち座りのための手すり  など
e. 水栓金具は操作しやすい形状で、温度調節が安全に行えるものを利用する。
f. 室温の急激な変化による身体負担を軽減するため、換気・乾燥・暖房の可能な空調設備の設置が望ましい。

照明の配慮項目
 加齢に伴う視覚の劣化は、40代後半から急速に進みます。そのため視覚機能の低下に対応した照明計画を行う必要があります。
a. 水晶体などの黄濁化や視細胞の減少にともなう視力低下に対しては、照度をあげると視力は向上します。読書や手仕事などは若齢者の2倍程度、屋外などでは3倍程度の照度を確保する必要があります。
b. 水晶体などの濁りに起因する眩しさに対しては、眩しい光源が直接目に入らないような照明器具や照明手法を選ぶことが大切です。
c. 明るいところから急に暗いところに移ったときに、目が順応しないといった明暗順応力の低下に対しては、室内のそれぞれで照度の差が大きくならないようにしたり、室内から外部への出口での配慮が必要です。
  また夜間にトイレに行くときは、照明が明るすぎると覚醒刺激となるため、深夜の廊下やトイレは照明を調光できるようにして、明るすぎないようにする必要があります。
  廊下は1〜10lx、トイレは10〜20lx程度が適切な照度となります。