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研究報告
「住まいの中で困っていること」に関する研究報告書
1.はじめに
 現在、住宅の性能が大きく変化していると同時に、住まい手である家族像も多様化し、その住まい方にも大きな変化が起きている。しかし、今日の住まいに適合した住まい方の規範が形作られていない上に、加えて昔からの健康な住まい方の工夫や知恵といったものが継承・応用されないまま、混沌とした状態となっている。
  そういった中で個々の住まい手は、住まいや暮らしの中でいろいろな困ったことや問題点に直面している。しかし、これらに対して適切な対策を講じようにも、住まい手に利用可能な情報や知識が限られているため、なかなか十分な対応ができず、これらの問題点が放置されたままといった事態も生じている。
  こうした問題を放置しておくと、住宅や住まい手の健康を損ねたり、安全が阻害されたりするおそれがある。今回はそういった点を考慮し、住まい手が「住まいの中で困っていること」をピックアップし、どのような対策を住まい方の知識(技術)として提案できるのかを検討することとした。
2.「住まいの中で困っていること」の検討
 住まい手が「住まいの中で困っていること」として、(1)実際にどのようなことがあるのか、どんな不具合等が起こっているのか、(2)それらに対してどう対応しているのか、対応できていないのか、(3)対応のしかたについて具体的に知っていることは何なのか、知らないことは何なのか等、住まいの中で住まい手が抱えている問題点について検討した。
3.「住まいの中で困っていること」の原因の検討
 「住まいの中で困っていること」の原因についての検討を行った。その結果、住宅購入時点から問題があるもの(立地・規模・プラン・性能品質等)や経年変化によるもの(劣化やライフステージ・ライフスタイルの変化への対応等)といったすぐには解決できない問題から、困った際に依頼したり相談したりする窓口がわからない、メンテナンスや点検方法を知らないといった知識不足や、取扱説明書や「住まいの手引き書」等を受け取っていない、どこへしまったかわからないために対処できないといったものまで、さまざまな原因が浮かび上がってきた。
4.「住まいの中で困っていること」の対応策の検討
 対応策として、対応のレベルの違いを考慮し、次の3つに大きく分類した。
A. 「個別に解決できる問題」
(住まいの手入れや日常的なメンテナンスなど)
B. 「共同で解決してゆく問題」
(集合住宅の共用部分や、近隣で話し合って対応など)
C. 「容易には解決しにくい問題」
(建替・住替・大規模なリフォーム等が必要となるなど、コスト面からみて問題解決に向けてハードルが高い内容)
5.「住まいの中で困っていること」の分類
 困っていること・考えられる原因・対策案について、全体を一覧表(マトリックス)の形にまとめることとした。横軸には、「住まいの中で困っていること(問題点)」に対応して、「考えられる原因」「対応策の提案」が連動する形で示せるようにしている。縦軸は、前述した解決の難易度の違いにより、「個別に解決できる問題」「共同で解決してゆく問題」「容易には解決しにくい問題」に大きく分類し、PDF文書にまとめた。
困っていること 考えられる原因 対応策の提案
個別に解決できる問題 設備関連
広さ
間取り
寸法
性能
住まい方
その他

 >表「住まいの中で困っていること」
6.まとめ
 これからは、自分の家は自分自身の手で大切に守っていくという観点から、住まい手が自己管理のもとに住まいの点検・メンテナンスや簡易な修繕といった日常的な管理を実施するという自己責任の原則が大切な要件となってくる。そのためには住まい手自身が、住まいの中で起きる不具合や問題点といったことから、経年変化・建物劣化といった内容に対しても、正しい知識と対応策を「住まい方の技術」として持っておく必要がある。
 日常的な住まいの見守りは、住まいの問題要素の早期発見・早期対応につながり、住まいにとっても住まい手にとっても安心・安全かつ健康な環境を実現し、さらには住宅の長寿命化にもつながっていくと考えられる。
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